結局のところ、遺言書を作成するとどんな良いことがあるのでしょうか? また遺言書を作成することに、デメリットは全くないのでしょうか?
今日は、遺言書を作成することのメリットとデメリットをご紹介します。「遺言書の作成に今いち乗り気になれない」という人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
遺言書を作成する三大メリット
遺言書を作成するメリットは、大きく分けて3つあります。
1.自分の遺志を残せる
自分の遺志を残せることは、最大ともいえる遺言書のメリットです。
当然のことながら、どんな状況でこの世を去るかは誰にも分かりません。もしかしたら病気になって余命を宣告される
かもしれませんし、急に事故で亡くなる可能性もあるでしょう。
つまり自分が他界した後のことを、家族や身内と事前に話し合っておけるとは限らないということです。
ましてや大人になれば、家族や身内と会う機会はグッと減るのが一般的。たまに会うからこそ、できるだけ楽しい話をして過ごしたいと思うのは当然の心理です。そんな心理が働くことで「自分が他界した後の話をなかなか切り出せない」という人も、少なくないと考えられます。
その点もし遺言書を残しておけば、家族や身内と無理に話し合う必要がありません。しかも遺言書には法的な効力があるため、基本的には自分の遺志を尊重してもらえます。
2.法定相続人でない人に財産を残せる
2つ目のメリットは、法定相続人でない人にも財産を残せることです。
法定相続人とは、その名の通り法律で定められている相続人のことを指します。例えば、配偶者と子どもは法定相続人です。
ただ中には、血のつながりがない人や戸籍上の配偶者でない人にも財産を残したいと考える人がいます。代表的なのが「内縁の妻(夫)」や「配偶者の連れ子」などです。遺言書を作成しないまま他界した場合、こういった相手には遺産の相続権がありません(※)。
※配偶者の連れ子に関しては、生前に養子縁組を済ませておけば相続権を与えられます
法定相続人でない人に財産を残したいと考えるなら、遺言書の作成は最も確実な方法といえるでしょう。
3.遺族同士の争いを防げる
遺族同士の争いを防げることも、遺言書を作成する大きなメリットです。
遺産について遺族間でトラブルになるケースは少なくありません。家庭裁判所のデータによると2018年に家庭裁判所へ持ちこまれた遺産分割事件は、実に1万3,000件にも上っていました(※1)。
よくあるケースとしては、
● 不動産を平等に分割できない
● それぞれが自分の取り分を多くしたがる
● 故人の知らないところで資産が減っていた
などがあります。
いずれの場合においても、遺言書さえしっかり作成しておけばトラブルを防げた可能性はあるでしょう。
相続人が1人しかいないなら、話は別かもしれません。しかし相続人が複数いるなら、やはり遺言書を作成しておくことには大きなメリットがあるといえそうです。
ただ遺言書には、デメリットと呼べる部分もあります。
唯一のデメリットは時間・手間・費用がかかること
遺言書を作成するデメリットは、時間と手間、そして費用がかかることです。
遺言書の作成には、少なくとも遺産(財産)を整理する時間を要します。というのも遺言をするには、まず資産を整理する必要があるからです。
資産が多ければ多いほど整理は大変な作業となるため、あまり時間を自由に使えない人にとっては思いのほか「手間だ」と感じる可能性があるでしょう。
さらに遺言書の作成には、多少なりとも費用がかかります。「自筆証書遺言」であれば、さほど費用は必要ありません。ですがその代わりに、不備がないようしっかりと注意しなければいけないのも「自筆証書遺言」ならではの特徴です。
このように遺言書の作成には時間と手間、そして費用がかかります。そのため遺言書を作成するのが初めての人にとっては、ややハードルが高いといえるかもしれません。
遺言書を作成するなら終活ノートの作成がオススメ
遺言書を作成しようと思ったら、まずは財産や人間関係について整理する必要があります。
そこでオススメなのが、遺言書を作成する前にまず終活を始めることです。
終活とは、人生の終末に関する準備活動のことを指します。そして終活を進める上で必要なのが、終活ノート(エンディングノート)の作成です。終活ノートは、終活に必要な情報や感情などをまとめるために作成します。
終活ノートにまとめる情報の1つが「財産目録」です。「財産目録」は、そのまま「遺産目録」に書き換えられます。そのため遺言書を作成する前段階として終活ノートを作っておけば、スムーズに遺言書を作成できるのです。
終活の基本【2】エンディングノートとは?遺言との違い
まとめ
今日は、遺言書を作成することのメリットとデメリットをご紹介しました。
遺言書を作成する予定があるなら、ぜひ前段階として終活ノートを作成してみてください。遺産として残すべき資産や負債を整理することは、遺族だけでなくあなたにとってもきっと大きな意味を持つでしょう。
終活の始め方については、こちらを参考にしてみてください。
終活の基本【1】終活の定義・始めるべきタイミング・進め方
【参考データ】
(※1)第44表 遺産分割事件数―終局区分別―家庭裁判所別(PDF)|最高裁判所