終活では自分のためのお墓に目が向けられがちですが、今すでにあるお墓の管理はどのようになっているでしょうか。現在の継承者が亡くなった後、次の継承者は決まっていますか?継承者が無理なくお墓を管理できる状態になっていますか?
できれば目を背けていたい問題かもしれませんが、対策が必要な問題であれば少しずつ考えていかなくてはなりません。
今回は、墓じまいについて現在のお墓の悩みと墓じまい後の新しい供養場所などをご紹介します。
目次
1.現在のお墓についてこんな悩みはありませんか?
①自分の代でお墓を守る人がいなくなる
独身の方・子どもを持たない夫婦など現在は自分がお墓を守っていても、自分の死後にお墓を守ってくれる人がいない方。
②今後、お墓の管理のことで子どもや親族に面倒をかけたくない
お墓を守ることは定期的な掃除などの管理のほかに、維持管理費の費用も必要で決して楽な役割ではありません。その苦労を知っているからこそ自分の子どもや親族、将来の継承者の面倒にならないようにしたいと思っている方。
③お墓が遠方にありお墓参りに行くのが大変
新幹線・飛行機を使って移動するような遠方にお墓があり、お墓参りが時間・費用面でも大変。
④足腰が弱ってきてお墓参りに行くのがつらい
近い場所にお墓はあるけれど、高齢になり足腰が弱ってきてお墓参りに行くことが大変。お墓の掃除も意外と重労働でつらい。
⑤お墓の維持管理費を払い続けるのがつらい
お墓の維持管理費を毎年支払う必要があり、経済的な負担がつらい。
近年、時代の変化により地元から離れて仕事・生活をする人が増えました。しかし、古くからある先祖代々のお墓は変わらずに地元にあるためお墓参りや管理が難しくなっています。また、独身や子どもを持たない夫婦も増えているためお墓の継承者問題で頭を悩ませる人も増えています。
上記のような悩みをお持ちの方におすすめしたいのが「墓じまい」です。
今の状況に合わなくなってしまったお墓を墓じまいし、これからのライフスタイルに合う場所で新しく供養をするのです。
先祖代々のお墓を撤去するなんて…と後ろめたい気持ちになる方が多いと思いますが、管理する人がいなくなったお墓は無縁墓となってしまいます。放っておくよりは新しい場所で丁寧に供養されたほうがご先祖様も喜ぶはずです。
2.管理する人がいなくなったお墓はどうなる?
継承者がいなくなり管理する人がまったくいなくなったお墓を「無縁墓(むえんばか、むえんぼ)」と言います。無縁墓はお墓を掃除してくれる人も雑草を抜いてくれる人もいないため、その一画だけが荒れていき無残な状態になります。
また、管理費を毎年支払うタイプのお墓の場合、管理費の滞納が3年ほど続くと「墓地、埋葬等に関する法律」によって最終的にはお墓が撤去されます。すぐにお墓が撤去されるわけではありませんが、官報や立札にお墓の使用者やお墓に埋葬されている故人の名前が公表され、1年以内に申し出がない場合は撤去になります。
撤去では墓石が処分され、中に納められていたお骨は合祀墓(ごうしぼ)にうつされます。合祀墓への納骨は、骨つぼからお骨を取り出し血縁関係がない故人のお骨と一緒に納骨されます。他の人のお骨と混ざってしまうため、一度合祀墓に納骨してしまうとお骨を取り戻すことはできません。
3.墓じまいとは?
墓じまいとは今あるお墓を撤去して更地に戻し、その土地を墓地の管理者に返すことです。お墓に納められていたお骨は別の場所で供養します。
墓じまい後のお骨は、今あるお墓で抱いていた悩みを解消する方法やあなたのライフスタイルに合わせて供養場所を選びましょう。
新しい供養場所には、次のような選択肢があります。
・石のお墓にとらわれない自然派のお墓「樹木葬」
・屋内なので天候に左右されずお墓のお手入れが簡単な「納骨堂」
・従来タイプのお墓「一般墓」
・お墓を持たず自由に眠りたい方「散骨」
・いつまでも一緒に暮らすことができる「手元供養」
継承者の不安がある方は「永代供養」付きのお墓がおすすめです。
永代供養とは、お墓参りをする人がいなくても寺院・霊園が供養やお墓の管理をしてくれる仕組みです。継承者が自分の代で途絶えてしまう方はもちろん、子供が遠方に住んでいてお墓参りの負担をかけたくない方、将来継承者がいなくなってしまっても安心なお墓を探している方にもおすすめです。
永代供養付きのお墓には樹木葬や納骨堂・一般墓があります。永代供養を希望する方は、永代供養の有無を確認しながら新しい供養場所を検討しましょう。
4.墓じまいでのお墓撤去費用はどのくらい必要?
墓じまいの費用は大きく分けて①お墓を撤去する費用 ②新しい供養先の費用(新しいお墓、納骨堂、など)があります。②新しい供養先の費用は供養先によって大きく変わり人それぞれになるので、今日は①お墓を撤去する費用についてご紹介します。
4-1.お墓を撤去する費用はどのくらい?
お墓を撤去する費用は、次の4つの項目に分けることができます。
1)墓石の撤去・処分、墓地の整地費用 10万円/1m2(一般的なお墓の場合30~40万円)
2)閉眼供養のお布施 3~10万円
3)離檀料 3~20万円(寺院墓地の場合のみ)
4)手続きに必要な費用(埋葬されている故人の人数による)
1)墓石の撤去・処分、墓地の整地費用 10万円/1m2
現在のお墓の墓石を撤去・処分した後、その土地を整地するための費用です。一般的なお墓の面積は3~4m2ですので、30~40万円必要です。作業は重機を用いて行われますが、お墓の場所や状況によっては重機が使用できないこともあります。その場合は手作業で行うため、10万円/1m2より高額になる可能性があります。
墓石の撤去・処分、墓地の整地は石材店や墓石店へ依頼します。手間はかかりますが、複数社へ見積りを取ると料金の相場が理解できたり、スタッフの対応を知ることができます。また、墓地・霊園によっては依頼する石材店を指定している場合があるので見積りを依頼する前に確認しましょう。
2)閉眼供養のお布施 3~10万円
お墓からお骨を取り出す際、墓石に宿っている仏様の魂を抜く閉眼供養(へいがんくよう)を行います。閉眼供養では僧侶に来てもらい読経していただくので、僧侶へのお布施が必要です。お布施はあくまで“感謝の気持ち”を包むものであり、金額が設定されているわけではありません。ただ、地域でおよその金額が決まっていることもあるため、周囲の人に聞いてみるとよいでしょう。
3)離檀料 3~20万円(寺院墓地の場合のみ)
寺院墓地にお墓がある人で墓じまいをした後、他の寺院墓地・霊園などにお骨を移す場合は離檀料がかかります。寺院墓地には“檀家(だんか)”という仕組みがあり、寺院墓地にお墓を持つには檀家になる必要があります。他の寺院墓地・霊園などにお骨を移すということは、現在の檀家を辞めるということです。離檀料は今までお墓を守ってくれた感謝の気持ちのお金です。
離檀料もお布施と同様にあくまで“感謝の気持ち”を包むものであり、金額が設定されているわけではありません。同じお寺の中で墓じまいをした方を探して金額を聞くことは難しいので、およその金額を知りたい場合は直接僧侶に聞いてみてもよいでしょう。この時、あまりにも高額な離檀料(数百万円~一千万円)を請求されてトラブルになったというケースもありますので、困った時にはお寺の本山に問い合わせ・相談をしてみましょう。
4)手続きに必要な費用(埋葬されている故人の人数による)
お骨をお墓から取り出して移動させるには現在お墓がある場所を管轄する自治体(行政)の許可が必要です。その許可がおりていることを示す書類が「改葬許可証」です。改葬許可証を発行してもらうために必要な書類(3種類)と改葬許可証取得の手続きには費用がかかります。
●改葬許可証の発行に必要な書類
・改葬許可申請書 無料
改葬許可証の発行を申請する書類です。現在お墓がある場所を管轄する自治体の役場窓口でもらうことができます。また、自治体HPから無料ダウンロードできる場合もあります。
・埋葬証明書(または、納骨証明書) 300~1500円×埋葬されている人数分
現在のお墓にお骨が埋葬されていることを証明する書類です。現在のお墓の管理者に依頼して発行してもらいます。
・受入許可証(または、墓地使用許可証、永代使用許可証) 400~1500円
新しい納骨先でお骨を預かることを許可されていることを証明する書類です。新しい納骨先と契約後に発行してもらいます。
●改葬許可証 無料~500円×埋葬されている人数分
お骨をお墓から取り出して移動させる許可を証明する書類です。この書類がないと墓じまいはできません。改葬許可証の発行に必要な書類(3種類)を現在お墓がある場所を管轄する自治体の役場に提出すると発行してもらえます。
5.墓じまいの手順
最後に墓じまいの手順を7つのステップに分けてご紹介します。これから墓じまいをする方や墓じまいをする可能性がある方はぜひお読みください。
①親族やお墓の名義人に相談し了承を得る
まずは親族やお墓の名義人に墓じまいのことを相談し了承を得ましょう。勝手に墓じまいしてしまうと、後々のトラブルにつながります。たくさんの故人が納骨されているお墓では会ったこともない遠縁の親戚がいる可能性があります。知らない人だからと面倒臭がらずに相談しに行きましょう。漏れなく相談するために知り合いの親族にお墓と関係のある親戚について教えてもらうことも大切です。
また、本家のお墓を墓じまいする時には分家の親族にも了承を得たほうが良いでしょう。
②現在のお墓の管理者に墓じまいの相談をする
現在のお墓の管理者に墓じまいの相談をしましょう。ここで気を付けたいのが、最初から「墓じまいをします。今日はその挨拶に来ました。」という決定事項の報告のような相談をしないことです。特に寺院墓地の場合、墓じまいは檀家を辞めることであり寺院の経済状態に直結します。僧侶も人間ですので、突然やって来て「墓じまいをします。」と言われたら穏やかではないでしょう。円満に墓じまいを進められなくなったり、離檀料のトラブルになるかもしれません。
最初の相談では、お墓を守っていただいている感謝やあまりお墓参りに来ていないことをお詫びしながら、現在の困っている状況を交えて墓じまいをすることも考えているという旨を話す程度が良いでしょう。「やはり、墓じまいをすることにしました。」という報告はまた後日にしておきましょう。
③新しい供養先の契約をする
②で現在のお墓の管理者に相談後、墓じまいの了承を得ることができたら新しい供養先を決めて契約をします。現在のお墓に埋葬されている故人の人数を把握しておくと探しやすくなります。後継ぎの心配・不安がある方は永代供養付きのお墓にすると安心です。
また、必ずしも新しい供養先へ移らなければならないというわけではありません。現在のお墓がある墓地・霊園に永代供養付きのお墓や合祀墓がある場合には、そちらへお骨を移すという方法もあります。
契約のタイミングについて
親族やお墓の管理者への相談をしている段階で新しい供養先を探したり見学しても良いですが、契約だけは親族やお墓の管理者の了承を得てからにしましょう。相談の段階で予想外に揉めてしまい、墓じまいができなくなる可能性があるためです。
④墓石の撤去工事を依頼する石材店・墓石店を決める
墓石の撤去工事(墓石の撤去・処分、墓地の整地)は石材店や墓石店に依頼します。必ず見積もりを取ってから契約しましょう。手間はかかりますが、複数社に見積もりを取ってから決めると安心です。どの石材店・墓石店へ依頼すればよいかわからない方は、先に現在のお墓を建ててくれた業者へ連絡してみましょう。
また、墓地・霊園によっては石材店を指定することがあるため先に確認しましょう。
⑤改葬許可証をもらうための行政手続きをする
お墓からお骨を取り出して移動させるには自治体の許可が必要になります。「改葬許可証」は自治体の許可がおりていることを示す書類です。
改葬許可証をもらうためには、改葬許可申請書、埋葬証明書(または、納骨証明書)、受入証明書(または、墓地使用許可証、永代使用許可証)の3つ書類を現在のお墓がある場所を管轄する自治体の窓口に提出します。この手続きを郵送で行うこともできます。お墓がある場所と遠方に住んでいて直接窓口に提出するのが難しいなどの場合には、自治体HPや電話で郵送での提出が可能か確認してみるとよいでしょう。
改葬許可申請書は役場の窓口や自治体HPでのダウンロード、埋葬証明書(または、納骨証明書)は現在のお墓の管理者、受入証明書は新しい供養先から発行してもらいます。
⑥閉眼供養(へいがんくよう)をする
閉眼供養とは、墓石に宿っている仏様の魂を抜くための供養です。閉眼供養に来て欲しい人と僧侶の日程を調整して行います。
閉眼供養は墓石の撤去工事当日でなくても問題ありません。1週間ほど前に行う方が多いようです。
⑦お墓の撤去工事
④で依頼した業者にお墓の撤去工事をしてもらいます。今までお墓があった場所は更地になり、お墓の管理者へ返還されます。
取り出したお骨は、直接現地へ引き取りに行くか自宅や新しい供養先に送ってもらえるよう石材店に依頼します。
まとめ
今日は、現在のお墓の悩みと墓じまい後の新しい供養場所、費用、手順についてお伝えしました。
墓じまいは、①お墓の撤去 ②新しい供養場所探し・契約 という2つの大きな作業があります。どちらも1日で終わる作業ではありませんし、家族・親族と話し合い意見をまとめていくことも必要な大がかりなものです。墓じまいを検討している方は、少し早いかなと思う段階から動き始めたほうがよいかもしれません。
墓じまいにあたってトラブルが起こることも!こちらの記事もご覧ください。
【お墓のしまい方②】墓じまいでのトラブルとその予防策