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【認知症による口座凍結④】任意後見制度と法定後見制度のちがい

判断能力が低下した本人の財産を守るための制度として、『任意後見制度』と『法定後見制度』があります。任意後見制度は将来の備えとして判断能力が十分にあるうちに契約し、法定後見制度はすでに判断能力が低下した方が契約します。契約のタイミングにちがいがあるほか、制度の内容にもちがいがあります。

今日は、任意後見制度と法定後見制度のちがい、どちらを選ぶと良いか、についてご紹介します。

 

1.任意後見制度と法定後見制度のちがい

①契約締結のタイミングと支援開始のタイミング

任意後見制度: 本人の判断能力が十分にあるうちに契約し、将来、判断能力が低下したら支援開始

法定後見制度:本人の判断能力が低下してから契約し、家庭裁判所の審判が確定したらすぐに支援開始

任意後見制度は、将来の備えとしての役割があります。そのため、本人の判断能力が十分にあるうちに契約し、支援開始は判断能力が低下した時です。支援を開始したい時は、後見人を監督する“任意後見監督人”を選任してからのスタートになります。

法定後見制度は、判断能力が低下した方のための制度ですので契約は判断能力が低下してからになります。支援開始は家庭裁判所に申立を行い審判が確定してからすぐになりますが、約4ヶ月かかります。

 

②誰が後見人を選ぶか

任意後見制度:本人

法定後見制度:家庭裁判所

任意後見制度では、本人が将来の後見人を選びます。家族はもちろん、友人、弁護士、法人を後見人にすることもできます。

しかし、いざ判断能力が低下した時、後見人を依頼するはずの人は仕事ができる状態にあるかはわかりません(病気で動けない、亡くなっている、信頼できる人ではなくなっていた、など)。この点を考慮して、支援を開始する時は必ず“任意後見監督人”を選任してからのスタートになります。任意後見監督人は、後見人の仕事を監督し本人に不利益がないよう保護する役割があります。

法定後見制度では、家庭裁判所が後見人を選びます。後見人候補者を本人が推薦することはできますが、最終的には家庭裁判所が選任します。希望する人が後見人にならなかったからといって制度の利用を取り下げることはできません。また、選任理由を教えてもらうこともできません。家族が後見人になった場合には基本的に無報酬ですが、専門職(弁護士、司法書士、行政書士、など)が後見人になった場合には月々の報酬が発生します。

 

③後見人の権限

任意後見制度:取消権がない。代理権は契約書で定められた範囲のみに限定される。

法定後見制度:取消権がある。代理権は財産に関するすべての法律行為に適用される。

※取消権とは、本人が行った不必要な契約を取消すことができる権限です。例えば、複数の新聞社との購読契約、リフォーム詐欺と思われる契約、訪問売買業者によって貴金属を不当に安く買取られた、などの契約を取消すことができます。

※代理権とは、本人に代わって契約などの法律行為を行う権限です。例えば、口座凍結の解除、年金などの社会保障給付の受領、介護契約、保険の契約・変更、などの行為を代理で行うことができます。

任意後見制度では、取消権がなく、代理権も契約書で定めた範囲のみに限定されます。判断能力が低下した自分を想像し代理権の範囲を決めるので、実際に支援が始まった際に代理権の範囲が狭かったということも考えられます。どうしても代理権の範囲を拡大したい場合や取消権が必要な場合には、任意後見制度を終了させ法定後見制度へ移行する方法もあります。

法定後見制度では、取消権があり代理権も財産に関するすべての法律行為に適用されます。利用者本人のその時の困り事・その時の判断能力に合わせて包括的に支援が行われます。

 

2.任意後見制度と法定後見制度 どちらを選ぶと良いか?

任意後見制度は後見人を選べる点は良いですが、代理権の範囲を想像するのが難しいことや取消権がないことで将来の自分に合った支援が受けられるかが不安です。一方、法定後見制度は後見人の権限が包括的で将来の自分に合った支援が受けられる点は良いですが、後見人を選ぶことができないのが心配です。

どちらの制度にも良い点・悪い点があり、優劣をつけることは難しいです。

そこで、優劣で選ぶのではなく、自分が優先したいことを考えてみましょう。

例えば、“後見人は自分で選びたい”“判断能力がまだあるうちに備えをしておきたい”という考えを優先したい方には任意後見制度がおすすめです。任意後見制度を選択する際には、お金・時間をかけて契約をしておいても幸いなことに判断能力が衰えずに生涯を終える、昔に契約した権限の範囲では支援が不十分だった、という結果になることも念頭におきましょう。

“今備えておくよりも、必要になった時に必要な支援を受けたい”“必要な支援が受けることができれば、自分で後見人を選ばなくても良い”という考えを優先したい方には法定後見制度が良いでしょう。法定後見制度を選択する際には、後見人に専門職が選任された場合には報酬が必要なこと、口座凍結をきっかけに制度の利用を申立する場合には申立から制度利用開始までの約4ヶ月間の生活費の工面、を考えておきましょう。

 

まとめ

今日は、任意後見制度と法定後見制度のちがい、どちらを選ぶと良いか、をお伝えしました。

判断能力が低下した自分を想定するというのは非常に難しく、あまり考えたくないことです。時間に余裕がある方は今すぐに決断しなくても良いので、財産について優先したいことから少しずつ考えてみるのも良いかもしれません。

 

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