相続があると相続税がかかる可能性があることはなんとなく知っていても、詳しいことは知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は相続とは切っても切り離せない相続税について、説明します。
目次
相続税とはどんな税金?
相続税とは、相続などで財産を受け取った人が払わなければならない税金です。
相続があった日(お亡くなりになった日)の翌日から10か月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。
ただし、相続税は、財産を相続すると誰にでも必ずかかるものではありません。
相続財産が一定金額以上ある人にしかかからないこととなっているからです。
相続税がかからない人は相続税の申告もする必要はありません(特例を使って相続税がゼロになる人は申告が必要)。
財務省の資料によると、平成29年の相続税の課税件数割合は8.3%となっています。
つまり、被相続人(お亡くなりになった人)100人がいたら、約8人に相続税がかかることとなります。
では、どんな人に相続税がかかるのでしょうか?見ていきましょう。
相続税は誰にでもかかる訳ではない
相続税は原則として、相続財産の合計が基礎控除額と呼ばれる金額を超えるときにかかることとなります。
相続財産の合計 > 基礎控除額
相続税がかかる相続財産とは、不動産や預貯金、有価証券、貸付金、生活用具など財産的価値のあるもの(一定の非課税財産を除く)が対象となります。生命保険金や死亡退職金は法律上の相続財産ではありませんが、みなし相続財産と呼ばれ、相続税の対象です。
一方、借入金などの債務や葬式費用があるときは、相続財産から控除することができます。
相続財産の合計は、相続人が複数いたら、すべての相続人が相続した財産を合計します。
そして、基礎控除額は次の計算式で計算します。
基礎控除額=3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば、法定相続人が妻と子2人の計3人であるときの基礎控除額は次のようになります。
基礎控除額=3,000万円 × 600万円 × 3 =4,800万円
この場合、相続財産の合計が4,800万円を超えるまで、相続税はかかりません。
相続財産の合計が8,000万円だったとすると、8,000万円から基礎控除額4,800万円を差し引いた3,200万円(課税される財産)に対して相続税がかかることとなります。
このように相続財産の合計が基礎控除額を超えたときに相続税がかかるのが基本的な考え方ですが、
相続税には様々な控除や特例も設けられているので、相続財産が基礎控除額を超えていたとしても相続税がかからないこともあります。
相続税はいくらかかる?相続税の計算方法
相続財産の合計が基礎控除額を超えるとき、相続税は次の流れで計算します。
①課税される財産を計算します。
課税される財産は次の計算式で計算します。
相続財産の合計-債務・葬式費用-基礎控除額=課税される財産
②各相続人の法定相続分の財産を計算します。
①で計算した課税される財産について、各相続人の法定相続分の財産を計算します。
課税される財産が3,200万円で、相続人が妻と子2人であるときは次のようになります。
妻の分:3,200万円×妻の法定相続割合1/2=1,600万円
子Aの分:3,200万円×子の法定相続割合1/4=800万円
子Bの分:3,200万円×子の法定相続割合1/4=800万円
ここでは実際に各相続人が相続した額ではなく、法定相続分を計算します。
③相続税の速算表を使って、各相続人の法定相続分の財産に対する相続税額を計算します。
<相続税の速算表>
法定相続分に応じる各人の取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
先ほどの事例に当てはめると次のようになります。
妻の分:1,600万円×15%-50万円=190万円
子Aの分:800万円×10%=80万円
子Bの分:800万円×10%=80万円
④③で計算された相続税額の合計を、実際に各相続人が相続した財産に割合で按分します。
先ほどの事例の相続税額の合計は350万円でした。
先ほどは法定相続割合で計算しましたが、これを実際に各相続人が相続した財産の割合で按分しなおします。
例えば、妻:子A:子Bの相続割合が、6:2:2だとすると次のようになります。
妻の相続税:350万円×6/10=210万円
子Aの相続税:350万円×2/10=70万円
子Bの相続税:350万円×2/10=70万円
各相続人毎の相続税の金額は変わりますが、合計が350万円となることは変わりません。
⑤各種控除が受けられる場合は、④で計算した各相続人毎の相続税額から控除します。
例えば、配偶者は相続税の配偶者の税額軽減を受けることができます。また、子が未成年である場合は、未成年者控除を受けることができます。他にも様々な控除があり、その人に対する控除を差し引いた金額が、その人が納めなければならない相続税の額となります。
このようにして、各相続人毎の相続税額を計算します。
相続税は、相続財産を受け取った人に対してかかる税金ですので、相続人それぞれが納めることが原則です。
なお、ここではできるだけ簡単に説明するため割愛しましたが、相続財産の評価方法や各種特例・控除の適用など、実際に相続税を計算する際には様々な要素があります。ご自身で相続税を計算する場合は、ここに書かれていることだけではなく、正確に相続税のことを理解してから進めるようにしてください。
相続税は節税できる
このように一定金額以上の財産を相続すると相続税がかかることになりますが、相続税は生前に対策をすることによって節税することができます。
節税の方法の一つが生前贈与です。
生前贈与をすると、今度は『贈与税』がかかりますが、贈与税がかからない範囲で贈与をしたり、贈与税の特例を使ったりすることで、贈与税がかからずに生前贈与をすることもできます。
その他にも節税の方法はたくさんあります。相続対策をするためには、ご自身の財産がどれくらいあるかを正確に把握するところから始めましょう。そして、もし、今、相続があったらどれくらいの相続税があるかをシミュレーションしておきます。計算された相続税額が多額になるのであれば、相続対策にもかなりの時間がかかることが予想されます。一刻も早く取り組むに越したことはないでしょう。
まとめ
相続税の基礎知識について解説しました。相続税に関して漠然とした不安があるかもしれませんが、実際に相続税がかかるのは一部の人に限られますし、事前に対策をすることもできます。まずは、相続税の全体像を理解しておきましょう。