樹木葬は従来の石材のお墓とはまったく異なる新しいお墓のスタイルとして注目されています。既存の墓地・霊園に樹木葬の区画ができたり、樹木葬だけの霊園ができたりとその数は増加傾向にあり、樹木葬のあり方が人々に受け入れられてきているようです。
今日は樹木葬の基本情報と特徴・種類をご紹介します。樹木葬に興味がある方、死後は自然に還りたい・石のお墓に閉じ込められるのはイヤだと思っている方はぜひ読んでみてください。
目次
1.樹木葬とは?
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木をシンボルとして樹木の根元周辺にお骨を埋葬する方法のことです。シンボルとなる樹木は自然木や植樹された樹木のほか、草花の場合もあります。樹木葬には種類があり、天然の土地・山に埋葬する「里山型」、樹木や草花・芝生を人の手で植えてきれいに造成した「公園型」の2つがあります。
樹木葬は昨今のお墓不足や晩婚化・非婚化によるお墓の継承者問題、子供はいても離れて暮らしているため負担をかけたくない、といった問題を解決する埋葬方法として納骨堂と共に注目を集めています。
2.樹木葬の特徴
従来のお墓と比べた時の樹木葬の特徴を4つご紹介します。
特徴①樹木をシンボルにしたお墓
通常のお墓は石材ですが、樹木葬は墓石の代わりに樹木や草花をシンボルにしています。自生している樹木から好きなものを選んだり、自分の好きな樹木を選んで植えてもらうこともできます。選んで植えてもらうタイプでは、ハナミズキやバラ、サルスベリ、ツバキなどその土地の気候に合った樹木から選びます。特にサクラは人気のようです。
自然が好きな方や墓石のお墓を建てたくない方におすすめです。
特徴②お墓を建てるより費用が安い
樹木葬は墓石のお墓を必要としない自然派志向のお墓です。お墓を建てる場合は永代使用料や墓石・施行費など一式で300万円程が必要ですが、樹木葬は墓石のお墓を必要としないため費用が安く一人70万円位が平均です。
特徴③永代供養付きでお墓の継承者がいなくても安心
樹木葬は基本的に永代供養付きなので、お墓の継承者を必要としません。子どもがいないご夫婦や独身の方、子供はいてもお墓を継がせる負担をかけたくない方なども安心です。
特徴④宗旨宗派不問で檀家にならなくても良い
寺院墓地にお墓を建てる場合、その寺院と同じ宗派である必要があったり檀家になる必要があります。一方、樹木葬の場合は宗旨宗派不問のことが多く、どの宗教を信仰していてもどの宗派に属していても自由です。また、檀家になる必要もありません。寺院墓地内の樹木葬の場合でも、樹木葬に納骨する方限定で宗旨宗派不問・檀家にならなくても良いところが多いです。
3.樹木葬の種類
樹木葬には里山型と公園型の2種類があります。その2種類についてメリット・デメリットと一緒にご紹介します。
3-1.里山型
里山型は樹木や草花が自生する天然の土地・山にお骨を埋葬します。場所や法律の関係で里山型の樹木葬の数は少ないですが、人の手が入っていない大自然の中に埋葬できるため「死んだら自然に還りたい」と希望する方にはぴったりです。
土地が広いため一人一本の樹木を植樹したり、自生している樹木の中から選ぶことができます。
<メリット>
・大自然の中で眠りたい、自然に還りたい、という樹木葬のイメージに近い
・一人一本の樹木が割り当てられることが多い
・一定年数が経っても合祀されないことが多い
<デメリット>
・都心から遠い場所にあるためお墓参りに行くのが大変
・公共交通機関でのアクセスがしにくい場所にあることが多い
・埋葬場所までの道が舗装されていないことがある
・どこに埋葬したかわからなくなる可能性がある
・自然災害(山崩れ・洪水など)によってお骨が行方不明に可能性がある
3-2.公園型
公園型は人の手で植えられた樹木や草花・芝生の中にお骨を埋葬します。一般の墓地や霊園の敷地内に設けられていることが多く、郊外だけでなく都心にも存在します。
<メリット>
・樹木や草花・芝生が人の手できれいに整えられている
・お墓までの道が整備され、トイレ・休憩所がある
・アクセスが良い
<デメリット>
・人の手で造り出された自然のため、「大自然の中で眠る」というイメージとは少し違う
・敷地面積が限られているため一人一本の樹木が割り当てられない可能性がある
(1本のシンボルツリーの周りにたくさんのお骨を埋葬するタイプなど)
・一定年数が経つとお骨を掘り起こして合祀される場合もある
4.樹木葬の費用
樹木葬は墓石のお墓を必要としないため、一般的なお墓を建てる時と比べると費用が安いです。樹木葬の費用平均は一人70万円ですが、埋葬スタイルが3タイプありタイプによっても費用が異なります。
タイプ①個別埋葬タイプ 20~200万円
故人1名に対して1本ずつ樹木を植えて埋葬するタイプです。お一人様用・ご夫婦用・家族用と人数ごとに区画が用意され、お骨は骨つぼや布袋に入れて他の人のお骨と混ざらないように埋葬します。シンボルとなる樹木は好きなものを選んで植えることができ、明確にお骨の場所がわかるのでお墓参りの際も困りません。樹木葬の中では一番豪華なタイプで、区画の広さやサービスの充実度を運営側で豊富に設定できるため費用の幅が広くなっています。
タイプ②合葬タイプ 10~60万円
1本のシンボルツリーの周りに複数人のお骨を埋葬するタイプです。故人同士に血縁関係などの関係性はありませんが、お骨を埋葬する場所は分かれているため他の人のお骨と混ざることはありません。このタイプはシンボルツリーを皆で共有するため自分だけのシンボルツリーを選ぶ・持つことはできませんが、個別埋葬タイプと比べるとその分費用は抑えめです。
タイプ③合祀タイプ 10~20万円
1本のシンボルツリーの下に複数人のお骨を一緒に埋葬するタイプです。お骨を埋葬する場所は分かれていないため、他の人とお骨が混ざります。個別スペースがないので樹木葬の中では一番費用を抑えることができます。最初から合祀(ごうし:骨つぼからお骨を取り出し、血縁関係がない他の人のお骨と一緒に1つの場所へ納骨すること)するので、後から手元供養用や改葬のためにお骨を返すことはできなくなります。きちんと家族・親族の理解を得ることが必要です。
5.樹木葬を検討するうえで注意したいこと
継承者不要で自然と共に眠ることができる魅力的な樹木葬ですが、検討する際に注意したいことがあります。
その①植物は季節や年月と共に変化していく
樹木葬を選ぶ人の中には、その場所にある樹木や草花の雰囲気が気に入って契約を決める人も多いと思います。しかし、樹木や草花は生きているものなので、いつもその状態にあるとは限りません。冬の寒い頃には葉を落とし、寂しい景観になるかもしれません。また、成長の段階で枯れてしまうこともあるでしょう。お気に入りの景観は季節や年月と共に変化していくことを念頭に置いておきましょう。
その②植物のお手入れすることはできません
樹木葬の敷地内にある植物の管理は管理者が行います。たとえ自分が契約した区画であっても、ガーデニングのように好きな樹木・草花を植えて剪定などのお手入れをすることはできません。
その③家族・親族に相談しましょう
樹木葬が注目されているとは言え、従来のお墓の概念は根強いものがあります。お墓参りの際、樹木に向かって手を合わせる、他の人も一緒に眠っている場所に手を合わせることに抵抗を感じる方もいます。お墓参りに来てくれる家族・親族がいる方は、契約の前にこの旨を相談しておきましょう。内緒で契約しても納骨を行ってくれるのは家族・親族です。
また、お墓参りの際にやはり抵抗を感じて新しいお墓を購入することになった場合、合祀されているとお骨を取り戻すことはできません。合祀タイプを希望している方はこの旨を伝えたうえで理解を得ましょう。
その④許可を得ている場所にしかお骨を埋葬することはできません
樹木葬ができるのならば自分の庭や故人が好きだった場所に樹木を植えてお骨を埋めたい、と思う方がいらっしゃるかもしれません。現在、樹木葬をしている霊園や寺院墓地は法律に基づいた許可を取得している土地です。樹木葬を行う場所はどこでも良いわけではなく、きちんと許可を取得した場所でないといけません。たとえ自分の敷地であってもお骨を埋めてしてしまうと、死体遺棄罪に問われることになります。絶対に行わないでください。
その⑤宗旨宗派の制限
樹木葬では「宗旨宗派不問」としている場合が多く、生前に信仰していた宗旨宗派にとらわれずに選ぶことができます。しかし、納骨後も宗旨宗派不問とは限りません。寺院が運営している樹木葬では、納骨後はその寺院の宗派のお作法で供養されます。生前に信仰していた宗旨宗派のお作法で供養してもらいたい方は注意が必要です。
6.樹木葬の購入と納骨までの流れ
どのような手順で樹木葬を進めていけばよいか、購入までの流れと納骨までの流れの2つに分けてご紹介します。
2-1.樹木葬)購入までの流れ
①樹木葬の情報収集
樹木葬を行っている寺院や霊園の情報を集めましょう。インターネット検索や新聞、折り込みチラシなどで情報を得ることができます。資料請求をするとパンフレットなどを送付してもらえるので、気になるところがあれば申し込んでみましょう。無料で資料請求できる場合が多いです。
②見学
情報収集した中で良さそうな樹木葬があれば、ぜひ見学に行きましょう。事前に見学予約をすると、見学当日に担当者が案内してくれます。
パンフレットなどで見る風景と実際の風景・雰囲気は異なる場合もあります。先程の『樹木葬を選ぶ時に注意したいポイント』を参考に、できれば複数箇所の樹木葬を見学しましょう。
③契約
いよいよ契約です。契約する樹木葬は必ず見学に行きましょう。また、契約前には契約する旨を家族や親族に相談して了解を得ましょう。やはりお墓のイメージとして従来の石材のお墓に根強いものがあり、手を合わせる対象が樹木であることや合祀される可能性に賛成できない方もいます。
契約の際は契約書類をじっくり読んで納得してから契約を行います。
④墓地使用料の支払い→墓地の使用許可証の発行
契約後、墓地使用料の支払いがあります。支払いが終わると墓地の使用許可証が発行され、無事に樹木葬の墓地を購入した証明となります。
墓地の使用許可証は、納骨する際に必要になるため紛失しないようにしましょう。
2-2.樹木葬)納骨までの流れ
※すでにご遺骨をお持ちの方は、③からの流れになります。
①死亡届を提出する
ご逝去後、個人の本籍地や届出人が所在する自治体・亡くなった場所の自治体に死亡届を提出します。提出すると火葬許可証が交付されます。
②火葬
火葬の際、火葬場の担当者に火葬許可証を渡しましょう。火葬後、火葬許可証に火葬した日にちを押印したものが返却されます。これが埋葬許可証になります。埋葬許可証は納骨の際に必要ですので、紛失しないようにしましょう。
③納骨式の日にちを決める
納骨式に呼びたい人と依頼するご住職の都合と納骨式の日にちのすり合わせを行います。日にちが決まったら、墓地の管理者へ連絡をしましょう。
④納骨式当日
式が始まる前に墓地の管理者へ埋葬許可証と墓地の使用許可証を提出します。
まとめ
今日は樹木葬の基本情報と特徴・種類、購入から納骨の流れなどについてお伝えしました。
樹木葬は自然派志向の方に人気のある埋葬方法です。しかし、永代供養期間が終わると土から掘り起こされて別の場所(合祀墓)に合祀される場合もあります。合祀された場所があなたの望むような自然環境ではないことも考えられます。樹木葬を検討する際には、実際に埋葬される場所の自然環境だけでなく、永代供養期間が終わった後の合祀の有無や合祀墓の自然環境などもしっかり確認しましょう。