特別縁故者の相続とは?知っておきたいポイント

特別縁故者の相続とは?知っておきたいポイント

相続には、特別縁故者という制度があります。 相続人がいない場合や、いても全員が相続放棄した場合に、生前縁故があった者が特別に相続できるという制度です。 極めて例外的な制度ですが、実 … 続きを読む 特別縁故者の相続とは?知っておきたいポイント

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相続には、特別縁故者という制度があります。

相続人がいない場合や、いても全員が相続放棄した場合に、生前縁故があった者が特別に相続できるという制度です。

極めて例外的な制度ですが、実際に認められている事例はあります。

ここでは、特別縁故者の相続について、知っておきたいポイントをまとめてみましたので、ぜひご活用ください。

相続のできる特別縁故者とは誰のことを指すのか

単に近所付き合いをしていたというくらいでは特別縁故者にはあたりません。

特別縁故者になるためには、以下のような一定の条件があります。

 

・被相続人と生計を同じくしていた者

内縁の妻や事実上の養子などがこれにあたります。

内縁の妻とは、婚姻をしていないものの、事実上は夫婦のような生活をしている者のことです。事実上の養子も、実の子どものような関係にあった者のことです。

 

つまり、婚姻も養子縁組もしていなくても、一つ屋根の下で家族同然に暮らしていれば、特別縁故者にあたる可能性は高いと言えます。

 

・被相続人の療養看護に努めた者

被相続人の介護や看護、身の回りの世話をしてきたような人のことです。

介護士や看護師など、仕事として携わった人は基本的には除きます。報酬以上に献身的に愛情をもって世話をしていたなどの事情があれば、介護士や看護師等も療養看護に努めた者に含まれる可能性もあります。

 

・その他被相続人と特別縁故があった者

実の親子のような関係にあった者や、よく相談をしていた者、後見契約や身元引受人になり精神的支えになっていた者なども、特別縁故者として認められることはあります。

つまり、被相続人と生前密接な関係にあった人たちは、特別縁故者にあたる可能性があります。

 

*実際にこれらに相当するかは裁判所の判断によります。

 

特別縁故者として相続財産分与を受けるために必要な申立て

 

特別縁故者になるためには、家庭裁判所に対して特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをすることが必要です。

以下に、申立てについてまとめてみましたので、参考にしてください。

 

・申立ての方法

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

 

・申立ての期間

相続人の不在が確定してから3ヶ月以内。

(*特別縁故者と判断する前に、相続人を捜索します。相続人がいた場合は、特別縁故者にはなれません。)

 

・申し立てに必要なもの

申立書

申立人の住民票や戸籍謄本

収入印紙(800円)

事務連絡用の切手

その他(内縁の妻であれば、それを証明する書類等)

 

特別縁故者が相続するのに注意したいポイント

・相続人と連絡がつかない場合

相続人はいるが連絡がつかない場合は、注意が必要です。

相続人は不在ではないため、特別縁故者は相続財産分与請求をすることができません。

 

相続人が行方不明の場合には、必要に応じて、失踪宣告の手続きや不在者財産管理人を選任することが必要になってきます。

 

・特別縁故者でもかかる相続税について

相続税の計算にあたっては、基礎控除や配偶者控除などの各種控除や小規模宅地の特例などの相続税額を少なくするための特例も設けられています。

しかし、特別縁故者は相続人ではないので基礎控除でも法定相続人の数による加算はありません。また、特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合には、配偶者控除の適用を受けることもできません。特別縁故者は被相続人の親族ではないため、小規模宅地の特例の適用要件も満たさないこととなります。

 

さらに、特別縁故者が相続した場合には、相続税額の2割が加算されてしまいます(*相続税法では、一親等の血族または配偶者が相続する以外には、相続税額の2割が加算される)。

特別縁故者が財産分与を受けたときには相続税が多額になる可能性があるため、相続税の納税時に慌てないよう、税金面での出費にも注意しておきましょう。

 

まとめ

 

特別縁故者になるためには、被相続人と生計を同じくしていた者・被相続人の療養看護に努めた者・その他被相続人と特別縁故があった者などいずれかにあたる必要があります。

 

さらに、相続財産管理人の選任、相続債権者・受遺者に対する請求申出、相続人捜索の公告と手続き等、手続き面でとても煩雑ですし、税金面でも負担が大きいものです。

 

このように特別縁故者の財産分与請求は、極めて例外的な制度といえます。

 

もし、事前に財産をあげたい・受取りたいというのであれば遺言などで確実に意思を残しておくことをおすすめします。