相続財産の受け取り方は?遺言書の有無と相続の流れを確認しよう

相続について難しいと感じている人は少なくないかもしれません。 ですが流れさえ押さえておけば、必要な部分を専門家に依頼するなどしてスムーズに相続を終えることが可能です。 遺言書がある … 続きを読む 相続財産の受け取り方は?遺言書の有無と相続の流れを確認しよう

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相続について難しいと感じている人は少なくないかもしれません。
ですが流れさえ押さえておけば、必要な部分を専門家に依頼するなどしてスムーズに相続を終えることが可能です。
遺言書がある場合とない場合とでの相続の受け取り方、相続の方法を解説します。

相続の受け取り方~遺言書~

遺言書があるかないかで相続の受け取り方は変わってきます。
まずは遺言書があるかどうか確認しましょう。

遺言書は、引き出しや金庫など身の回りで保管されていることがあります。
まずは被相続人の自宅に遺言書がないか、見つからない場合は金融機関の金庫に預けられていないか、知人の専門家に預けられていないか、公正証書役場で作成していないか確認しましょう。

遺言書に従って相続する

遺言書がある場合は、基本的に遺言書の内容に従って相続します。
ただし相続人であっても、遺言書を勝手に開封すると罰金の対象になることがあります。
勝手に開封したからといって遺言書の内容自体に変化はありませんが、必ず家庭裁判所で検認請求の手続きをとるようにしましょう。

遺言書による効力

遺言書は、相続人の排除、各相続人における相続財産の指定、分割方法の指定などの効力を持ちます。
内縁の妻やその子など、法定相続人に含まれない人への相続も可能です。

遺言書が無効になるケース

相続においてさまざまな効力をもつ遺言書ですが、遺言書が無効になるケースもあります。

たとえば日付や押印がない場合、相続する内容が明確でない場合です。
被相続人、本人が確実に作成したものでも不備があれば意味をなさないので注意しましょう。

また、遺言書の内容によっては相続を内容通りに実行できない場合があります。
たとえば、内縁の妻の子に遺産をすべて相続するなど記載があった場合です。

1人に相続するような内容であっても、本来、相続人には遺留分といって法律上侵害のできない一定の相続分があります。
遺言書の内容は重視されますが、遺留分を無視するような相続はできません。

遺言書は相続において大きなウエイトを占めますが、必ずしも履行されるものでないことは知っておきましょう。

相続の受け取り方~相続人を確定~

遺言書がある場合は、遺言書の内容や相続人が重視されますが、遺言書がない場合はどうでしょうか。

遺言書がない場合は、相続人の確定が必要です。
遺言書がないときの相続の受け取り方の手順を確認してみましょう。

戸籍謄本を取得する

相続人確定のための必要なのが、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本と、相続人の現在の戸籍謄本です。

相続人を把握している場合でも、戸籍謄本を確認すると養子縁組があったり、認知している子どもがいたり、思わぬ相続人がいるケースもあります。

相続人を確実に決定する手段として戸籍謄本の取得は重要なのです。
なお、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本とは、死亡や婚姻による除籍謄本、法改正前の改正原戸籍謄本を含んだもののこと。

被相続人においては、すべての戸籍謄本が必要となることに注意しましょう。

戸籍謄本の取得は本籍地の市区町村役場で

戸籍謄本は本籍地のある市区町村役場で取得することになります。
住民票などからわかる現在の本籍地において書類すべてが揃う場合もありますが、他市区町村に転籍がある場合は戸籍をたどっていかなくてはなりません。

専門家に依頼する方法もある

相続人が戸籍謄本を取得することもできますが、家族構成など相続人が複雑だったり、転籍が多かったりすると、相続人が漏れてしまうことがあります。
確実にかつスピーディーに相続するためにも、弁護士や行政書士などの専門家に依頼する方法を考えてみてもよいでしょう。みんなの相続相談・大阪なら無料相談も可能です。

相続関係図を作成しておく

戸籍謄本を取得して相続人が確定したら、相続関係図を作成しておきます。
相続関係図は、名前や生年月日、相続人と被相続人の関係がわかるもので十分です。
相続関係図を作っておくことで、相続人との関係が明確になり、その後の手続きにも活用できます。

相続財産の受け取り方~遺産を確定~

相続財産の受け取り方として、相続人が確定したら、次に必要なのが相続する遺産の確定です。
相続というと、一般的に預貯金や土地・家屋などの資産が知られていますが、他にもさまざまな種類があるので漏れがないように1つ1つ確認していきましょう。

なお、死亡保険金や死亡退職金は受取人が確定しているため、相続する遺産には含まれません。

不動産や動産の確認

まず、土地や建物などの不動産の確認です。
被相続人所有のものかは、法務局で再発行できる権利書、あるいは登記のないものは固定資産剤の納税通知書で確認できます。

市区町村役場で発行してもらえる名寄せ帳でも被相続人が所有する不動産がわかります。
このほか、自動車や貴金属類など、動産についても確認しておきましょう。
自動車であれば車検証をもとに調べることができます。

預貯金、有価証券などを調査する

基本的に通帳やカードがあれば預貯金の残高を調べることができます。
ただし、通帳やカードがなくても、ネット銀行などでの取引の可能性はゼロではありません。
取引していそうな金融機関を絞り、取引の有無、残高を照会しておきましょう。

債務を確認する

相続というと不動産や預貯金などのプラスの財産に目が行きがちですが、ローンなどのマイナスの財産もあります。
相続においては、マイナスの財産を洗い出すことも重要です。

まずは、借用書や金融機関からの通知書などで借金の有無を確認すること、残高がどのくらいか確認すること。
他人の借金の保証人になっていた場合は、保証契約書などの有無も確認しておきましょう。

相続財産の受け取り方~遺産を分ける~

遺言書がある場合は、遺言書の内容を基本に遺産がわけられていきますが、遺言書がない場合は相続人で遺産を分割する必要があります。

遺産分割手続きの種類は、以下の3つです。
・遺産分割協議
・遺産分割調停
・遺産分割裁判

相続の受け取り方における3つの遺産分割手続き

遺産分割手続きにあたってまず考えられるのが、遺産分割協議です。
遺産分割協議とは、相続人同士が話し合いの場を設けて遺産分割を決定するもの。
判断能力に不安がある相続人などは、成年後見人などの代理を立てて話し合いを行ないます。

遺産の分配については、子のみの場合は平等で分け合うなどの基準がありますが、介護負担などそれぞれの事情もあるため、このような遺産分割協議の必要があります。

遺産分割協議で決まらなかった場合の次のステップが、遺産分割調停です。
遺産分割調停とは、家庭裁判所を通した遺産分割の話し合いのこと。
分割に必要な書類、それぞれの事情などを鑑みたうえで、より客観的に合意を目指します。

しかし、遺産分割調停においても、なかなか合意にまで達しないことがあります。

そうした場合の手続きが、遺産分割裁判です。
裁判によって遺産分割の解決を図るもので、遺産分割調停で決着がつかなかった場合は、遺産分割裁判に自動移行されます。

なお、いきなり遺産分割裁判を起こすことも可能です。

3つの遺産分割の方法

遺産をシンプルに、均等にしてもよいですが、実際、各遺産の評価額は異なりますし、各家庭の事情もあります。

遺産分割で知っておきたい、現物分割、換価分割、代償分割の3つの方法についてみていきましょう。

現物分割

現物分割とは、遺産を現金化せずにそのままものとして分割する方法です。
たとえば、土地と家屋を長男、車と貴金属を長女、預貯金と株式を次男のように分けています。

すべての遺産をお金に変える手間は省けますが、資産によって大きく価値が異なるのが注意点。
場合によっては、一部売却するなど各相続人が納得できる形にする必要があります。

換価分割

土地や自動車などの遺産をすべて売却して、金銭できれいに相続人で分割する方法です。
すべてお金に換えるため、わかりやすくシンプルな方法となります。

しかし、換金にあたって処分費用などが発生するため、結果として手元に思ったように残らない可能性も考慮する必要があるでしょう。

代償分割

相続人の間で、分割に大きな差が開いてしまった場合に考えられる分割方法です。
たとえば土地や建物などを1人が相続する場合、評価額が3,000万円で、残りの資産が2,000万円であると他の相続人との間で不公平感が出てしまいます。

不公平を解消するために、長男が評価額3,000万円の不動産を相続する代わりに、次男が残りの預貯金2,000万円を相続、足りない500万円を長男が次男に支払うというものです。
長男が500万円支払うことによって、結果的に平等に遺産が振り分けられたことになります。

ただし、代償分割は相続人が自身の資産から一部負担する必要があるため、相続の代償として他の相続人に振り分けられる資産がなければ成立しません。

相続財産の受け取り方~相続税の申告~

相続財産の受け取り方については、相続する遺産の分割、名義変更の実行によって完了します。
しかし、もう1つ忘れてはならない手続きがあります。
相続税の申告と納付の手続きです。

ただし、相続税の申告や納付が必要なのは、一定以上の相続を受けた場合。
相続した資産の評価が低い場合などは相続税の対象にならないことがあります。

相続税がかかる人は?

実際に相続対象となる財産と、相続税がかかる財産は異なります。
相続税の対象となる財産には、預貯金や不動産の他、相続財産には該当しない死亡保険金や死亡退職金なども対象となる点に注意しましょう。

なお、相続税は対象となる財産の評価額の総額から基礎控除を差し引いた額に対して課税されます。

基礎控除は法定相続人の数によって変動しますが、総額3,600万円(相続人1人の場合)を超えなければ相続税がかかることはありません。
この場合、相続税の申告・納税ともに不要です。

反対に、総額3,600万円を超える場合は、法定相続人の数によって課税されることがあるので注意しましょう。
なお、2015年の法改正によって、基礎控除の額は6,000万円(相続人1人の場合)から大幅に引き下げられています。

2015年までは申告が不要だった人も、申告が必要となることがあります。以前資産を確認したことがある人も、再度相続の際に確認されることをおすすめします。

相続税の計算方法

相続税の基礎控除は、以下の通り計算します。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人が5人いる場合は、
3,000万円 + 600万円 × 5 = 6,000万円
6,000万円が基礎控除の額です。
相続する資産の総額が1億円だった場合、6,000万円を差し引いた、4,000万円が課税対象額になります。

相続人が配偶者1人、子4人の場合で配偶者が半分、残りを子で均等に分けた場合、課税対象となる額は以下の通りです。

配偶者 (実際の分割5,000万円) 4,000万円 ÷ 2 = 2,000万円(課税対象額)
子1   (実際の分割1,250万円) 4,000万円 – 2,000万円 ÷ 4人 = 500万円
子2   (実際の分割1,250万円) 4,000万円 – 2,000万円 ÷ 4人 = 500万円
子3   (実際の分割1,250万円) 4,000万円 – 2,000万円 ÷ 4人 = 500万円
子4   (実際の分割1,250万円) 4,000万円 – 2,000万円 ÷ 4人 = 500万円

相続税は、課税対象額によって税率や控除額が変わってきますが、1,000万円以下の場合は、一律10%なので、子1~4が負担しなければならない相続税の額は各50万円です。

なお、配偶者については、必要な手続きをすれば総額1億6,000万円まで相続税がかからないため、相続税の支払いの必要はありません。

ただし、相続税の申告期限の10ヶ月以内に必要な手続きをしない場合、軽減分が適用されないので注意しましょう。

相続税の申告については、財産評価などが複雑かつ申告期限があるため、税理士など専門家に依頼するのが手っ取り早いです。

まとめ

相続の受け取り方を把握しておけば、実際に相続になった場合に慌てずに済みます。
戸籍謄本の取得や遺産分割裁判、相続税の申告など、内容によっては少し複雑な部分もあるので、税理士などの専門家の力を借りながら解決されるとよいでしょう。