相続する人すべてが必要なわけではないですが、相続をすると相続税の申告が必要なケースがあります。相続税の申告は申告期限が設けられているので、適切かつ早めに行なうことが大切です。
今回は、相続税の申告期限と相続税の申告期限に遅れた場合のペナルティについて解説します。
目次
相続税の申告期限はいつまで?
相続税の申告と納付には期限があります。
申告および納税期限を知って、期限内に提出するようにしましょう。
相続税の申告と納税は10ヶ月以内
相続税の申告期限は、申告も納付も被相続人の死亡を知った翌日から10ヶ月以内です。
被相続人の死亡を知ったのが1月20日だった場合、同じ年の11月20日が申告期限となります。
税務署への申告だけでなく、納税期限も同じ日になるため、納付漏れがないように注意しましょう。
死亡した日=死亡を知った日ではない
相続税の申告期限の起点になるのは、被相続人の死亡を知った日です。被相続人が死亡した日と必ずしもイコールになる訳ではありません。
ただし、これは文字通り本人が知った日ということではなく、社会通念上知り得た日のことを意味しており、失踪宣告を受けるなど特別な場合を除いて通常は被相続人が死亡した日=死亡を知った日となりなます。
私が旅行をしていて死亡を知ったのが1カ月後だから、相続税の申告期限も1カ月先になるということはありません。
申告期限が土日の場合は翌平日
相続税の申告期限は、基本的に被相続人の死亡を知った翌日から10ヶ月以内ですが、申告期限が変動するケースがあります。
申告期限が、土日または祝日にあたる場合です。
死亡の事実を知った翌日から10ヶ月後が土日または祝日の場合、申告期限は次の平日となり、後ろ倒しとなります。
申告書は発信主義となるため、郵送で申告した場合は、消印日が提出した日です。
11月20日が提出期限の場合、郵送で税務署に届かなくても、消印の日付が11月20日であれば申告期限に提出したことになります。
相続税の申告期限を過ぎるとどうなるの?
遺産分割が申告期限までにまとまらないケースは少なくありません。
しかし、実際の遺産分割がまとまっていなかったとしても相続税の申告・納税期限が延長されることはありません。基礎控除を超えた相続がある場合は、一旦、申告と納税をする必要があります。
なお、遺産分割をした結果、申告した税額が多くなるような場合には、分割が確定してから更正の請求を行なうことにより還付を受けることができます。
遺産分割が完了していないことは、申告を遅らせる理由にはならないので注意しましょう。
なお、相続税の申告が遅れたり、あるいは申告していても期限を超えて納付されていなかったりすると、延滞税を負担することになります。
延滞税の負担額の具体例
延滞税は、納期限翌日から2ヶ月を経過するまでで年率7.3%、特例基準割合+1%のいずれか低い方。
2ヶ月経過後は、年率14.6%、特例基準割合+7.3%のいずれか低い方です。
平成30年度については、特例基準割合が1.6%になるため、2ヶ月以内なら年率2.6%、2ヶ月以降なら年率8.9%が延滞税の計算に適用されます。
たとえば、3ヶ月延滞してしまった場合(1ヶ月30日計算とする)以下のように延滞税を計算します。
(例)納付する額が50万円だった場合。平成30年度の場合で計算。
(50万円 × 2.6% × 60日) ÷ 365日 = 2,136 (※1円未満切り捨て)
(50万円 × 8.9% × 30日) ÷ 365日 = 3,657
2,136 + 3,657 = 5,700円 (※100円未満切り捨て)
納税するべき額が50万円で90日支払いが遅れた場合、発生する延滞税は5,700円です。
以下、30日単位で1年まで延滞した場合の延滞税を納税額50万円の場合で計算してみました。
延滞日数 | 30日 | 60日 | 90日 | 120日 | 150日 | 180日 |
延滞税 | 1,000円 | 2,100円 | 5,700円 | 9,400円 | 13,100円 | 16,700円 |
延滞日数 | 210日 | 240日 | 270日 | 300日 | 330日 | 365日 |
延滞税 | 20,400円 | 24,000円 | 27,700円 | 31,300円 | 35,000円 | 38,700円 |
このように、特に申告期限から2ヶ月を経過すると延滞税の負担額が大きくなっていきます。
相続税の額が大きいほど、延滞税が膨らみ、本来納税する以上の額を負担しなければなりません。
相続税が高額になると申告漏れはかなり深刻な問題に
納付が遅れた場合などに加算される延滞税ですが、申告をしなかった場合、申告漏れがあった場合でも税金が課せられます。
追徴課税といわれるペナルティです。
申告漏れや無申告で課される追徴課税
追徴課税には延滞税以外に、以下の3つの種類があります。
・無申告加算税
・過少申告加算税
・重加算税
・無申告加算税
税務調査前に自主的に申告した場合 | 5% |
税務調査後の期限後申告で相続税額50万円までの部分 | 15% |
税務調査後の期限後申告で相続税額50万円を超える部分 | 20% |
無申告加算税とは、相続税などの税金の申告期限を超えても申告をしない場合の追徴課税。
税務調査前に自主的に申告をすれば、加算額を抑えることができます。
申告期限を過ぎたから申告しないのではなく、申告期限を過ぎてもできるだけ早く申告及び納付を心がけましょう。
延長すればするほど、延滞税の増加、税務調査による追徴課税額増加のリスクが高まります。
・過少申告加算税
税務署指摘に自主的に申告した場合 | – |
指摘後の修正申告で期限内申告額または50万円いずれか大きい方を超えない部分 | 10% |
指摘後の修正申告で期限内申告額または50万円いずれか大きい方を超える部分 | 15% |
過少申告加算税は、申告漏れがあった場合など、本来納めるべき税金よりも少ない額での申告を行なった場合に課税されるものです。
ただし、指摘前に自主的に申告すれば、無申告加算税と違って追加で課税されません。
・重加算税
申告すべきものを隠ぺいして申告した場合 | 35% |
申告すべきものを隠ぺいし、かつ申告もしなかった場合 | 40% |
申告すべき財産を故意に隠した場合の追徴課税です。
5年以内に無申告加算税、または過少申告加算税があった場合、さらに10%追加されます。
悪質な場合は相続税法違反になるケースも
通常、無申告や期限後申告、あるいは隠ぺいがあった場合でも追徴課税のみで済みます。
しかし、多額の申告を故意に隠した場合など、相続税法違反に該当する場合は、刑罰によるペナルティもあり、懲役刑となることもあります。
内容にもよりますが、相続税法違反は、10万円以下の懲役か1,000万円以下の罰金です。
正しい相続税の申告手順を把握しておこう
相続税は、決められたルールに従って申告する必要があります。
申告の方法と手順を確認してみましょう。
相続税の申告書の内容に沿って申告書を作成しよう
相続税の申告書は、相続する財産を明らかにし、相続税を計算するためのものです。
申告書には記載するべき項目がありますので、指示に従って金額を記載していきます。
詳しい記載がわからない場合は、税務署でもらえる相続税の申告の冊子で確認するか、あるいは直接税務署に相談することもできます。
提出が必要な書類は取り揃えておこう
相続税の申告は、申告書の作成だけでなく、申告に伴う必要書類の準備もしなくてはなりません。
相続するものによって必要な書類が異なるので、漏れがないようにしっかり確認してから提出するようにしましょう。
【相続税の申告に必要な書類のリスト】
必要な公的書類 | ・被相続人の生まれてからの戸籍謄本
・被相続人の住民票除票 ・死亡診断書の写し ・相続人の戸籍謄本 ・相続人の住民票 ・相続人の印鑑証明書 ・遺言書/遺産分割協議書 |
不動産相続に関する書類 | ・登記簿謄本
・測量図や公図の写し ・固定資産税評価証明書 ・実測図 ・契約書(賃借地の場合) |
預貯金相続に関する書類 | ・死亡日の残高証明書
・被相続人の通帳写し(過去) ・相続人の通帳写し(過去) ・既経過利息計算書(定期預金) |
生命保険や火災保険に関する書類 | ・保険証写し
・支払保険料計算書 |
その他、資産に関連する書類 | ・証券等の預かり証明書
・配当金支払通知書 ・退職金支払調書 ・贈与税の申告書(生前贈与) |
借金に関する書類 | ・契約書の写し
・借入残高証明書 |
葬儀の費用に関する書類 | ・請求書または領収書
・明細表 |
申告期限内に管轄税務署に提出しよう
申告書を作成し、必要書類の準備が整ったら、いよいよ申告です。
被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内が申告期限となります。
相続税の申告が必要な人は、申告期限内に管轄の税務署に提出するようにしましょう。
まとめ
相続税の申告には期限が設定されています。
申告期限を過ぎると延滞税が発生することがあるため、期限を守って申告・納付するようにしましょう。
なお、相続税の申告は資産の評価など少々複雑な部分もあるので、慣れていないと想像以上に時間がかかってしまうものです。税務調査で申告誤りが見つかってペナルティが課せられる可能性もありますし、特例の適用を忘れていて余分に税金を支払ってしまう可能性もあります。
財産が多い場合など自身での申告が難しい場合は、税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。みんなの相続相談・大阪ならややこしい問題もわかりやすく、的確なアドバイスで問題を解決します。