土地の相続税を計算したいときに使用されるのが、国税庁の公示している相続税路線価です。実際、相続税に関わる土地を評価したいときどのように使うのか、注意するべき点はどこか紹介します。
目次
相続税路線価とは?
相続税路線価とは、相続税や贈与税において、相続または贈与する土地の評価を算定するための価格基準図です。単に路線価といわれる場合は、相続税路線価のことを指します。
ちなみに、相続税路線価を公表しているのは、相続税や贈与税の徴収に関係のある国税庁です。国税庁が価格を決め、毎年路線価を更新しています。
土地の相続や贈与を受けた際に使用する資料なので、納税予定額の参考に確認してみるのもよいでしょう。
相続税路線価はネットで確認できる
土地の評価に関する公的な資料には、相続税路線価の他に、公示価格などがあります。これらの資料は、それぞれ資料を提供している組織が異なり、中には資料を請求しないと簡単に見られないものもあります。
しかし、相続税路線価の調べ方は簡単です。理由は、インターネット上ですぐに見られるため。国税庁の専用ページで年度ごと、都道府県ごとのものを確認できます。
国税庁の相続税路線価のページはコチラ(http://www.rosenka.nta.go.jp/)
相続税路線価はいつ更新される?
相続税路線価は、毎年1月1日時点の土地評価を参考に作成されています。ただし1月1日に相続税路線価が公表される訳でなく、新しい価格が公表されるのは毎年7月前後です。
それでは、実際に相続が発生した場合、いつの相続税路線価を使用するのが適切なのでしょうか。正解は、相続のあった年度の相続税路線価です。
例外もありますが、一般的に相続のあったときというのは、被相続人が亡くなった日のこと。亡くなった日が平成30年1月1日であれば平成30年度の相続税路線価を使用することになります。つまり7月前後まで公示を待たなければなりません。
公示価格や固定資産税路線価などとの違い
土地の評価に関する公的な資料は、相続税路線価以外にも、公示価格や基準地価、固定資産税路線価があります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
公示価格は国土交通省で基準地価は地方自治体発表のもの
公的な土地の評価資料の中で性質が似ているのは、公示価格と基準地価です。公示価格は、国土交通省が毎年公示する土地の標準価格、基準地価は地方自治体が公示する土地の基準価格になります。基本的には同じような資料ですが、何が異なるのでしょうか。
公示価格と基準地価の違い
・公示地価の基準日は毎年1月1日で基準地価は毎年7月1日
・公示地価は毎年3月中頃、基準地価は毎年9月中頃に公示される
・公示地価は地価公示法、基準地価は国土利用計画法施行令が根拠
・公示価格の主な対象は都市計画区域内
・基準地価の対象は、都市計画区域外や商業地、工業地など公示価格よりも広範囲
このように、公示価格と基準地価では異なる部分があります。ただし利用用途は同様で、公共事業用地などの取得価格の参考になるものです。なお、公示価格や基準地価は一般の土地価格の参考にもなりますが、土地の利用用途や国の経済状況などで時価と乖離が生じることも少なくありません。
固定資産税路線価との違い
相続税路線価は、相続税や贈与税の土地評価の算定に使う資料と紹介しましたが、同じように税金の算定に使用するのが固定資産税路線価です。
固定資産税路線価は固定資産税の基準となる価格で、市町村(東京23区は東京都)が公示しています。都市計画税や不動産所得税、登録免許税と相続税の課税標準にもなる資料です。
また、固定資産税路線価と相続税路線価には相関があり、一部例外もありますが、相続税路線価は公示価格の約8割、固定資産税路線価は公示価格の約7割程度になります。
固定資産税路線価の評価が抑え目なのは、基本的に3年に1度の更新となるため。都市部など土地価格の変動が激しいところでは毎年見直されることもありますが、土地価格が大きく上下して納税者が不利にならないように、固定資産税路線価では評価を公示価格より3割ほど差し引いてみています。
相続税路線価はどのように使うのか
路線価を使って土地の評価額を計算する前に、国税庁のホームページから評価額を調べたい土地の相続税路線価を準備しておきましょう。
相続税路線図の見方についてですが、路線価図を確認していくと、各路線に数字とアルファベットが割り振られていることがわかります。例えば、「150D」という表示があったら、土地の評価額は1m2あたり15万円ということです。数字のあとのアルファベットは借地権割合になるので土地の貸し借りがなければ関係ありません。
それでは、1m2あたり15万円、150m2の土地の評価額を確認してみましょう。
150m2 × 15万円 = 2,250万円
土地の形など考慮せずに単純に計算したときの評価額は、2,250万円です。この評価額を相続税の計算で使用します。
土地を借りている場合
建物を建てるときに他人の土地を借りる場合、建物の所有者が土地を利用する権利である借地権が発生します。この借地権も相続の対象です。ただし、完全に自分の土地ではないので、借地権割合によって適切な評価額を出します。
150Dのようにアルファベットで示される部分が借地権割合です。A~Gまであり、それぞれ以下のような割合を示します。
A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%
150Dのときの、150m2の土地の評価額の計算は以下の通りです。
150m2 × 15万円 × 60% = 1,350万円
路線価で評価できないときは?
路線価がわかるところは路線価方式によって評価額を出しますが、中には路線価のない地域もあります。路線価がない場合の計算方法が倍率方式です。
倍率方式による計算では、相続税路線価と同様に国税庁のページで確認できる評価倍率表、課税標準として固定資産税評価額を準備します。固定資産税評価額は、固定資産税の納税義務者に毎年送られる納税通知書の「価格」の部分から確認が可能です。
評価倍率表は、宅地や畑、山林などの用途別に各地域の倍率が記載されています。宅地の固定資産税評価額1,500万円で倍率が1.2倍だったときの計算をしてみましょう。
1,500万円 × 1.2 = 1,800万円
1,800万円が相続税における土地の評価です。
なお、評価倍率表には借地権割合が記載されていることがありますが、路線価方式と同じように、借地権があれば借地権割合をかけて計算します。
相続税路線価での評価は相続対策になるか
相続税路線価と評価について解説します。
現金と現物ではどちらがお得?
土地をそのまま相続する方法もありますが、現金に換えて相続する方法もあります。土地を現金に換えるのは、相続税支払いのためのお金を用意したいとき、相続争いを避け平等に遺産を相続させたいときなどに便利です。
ただし、土地を売って5,000万円になったら現金5,000万円の価値になりますが、土地の路線価評価は公示価格の約8割程度で実際の時価よりも低いことがあります。5,000万円の場合、8割は4,000万円なので価格にして1,000万円の差です。
単純に考えるとお金に換えるよりは、評価額が低くなる現物のままで相続した方がお得にみえます。ただし時価は変動するもの。相続税路線価は1年に1回しか更新されないため、時価との乖離で必ずしも現物のまま相続する方がよいとはいえません。
遺留分の相続に注意
相続には法定相続人に最低限認められる遺留分があります。そのため、被相続人が3人の子どものうち1人だけに遺産を相続させるような遺言を残していたとしても、遺留分を侵害することはできません。
また、相続税路線価は相続税を計算する場合に使用すると解説しましたが、遺留分に関しては相続税路線価ではなく時価で計算します。
そのため、相続する遺産を相続税路線価で考えてしまうと、遺留分を侵害して思わぬトラブルに発展することもあるのです。遺留分があるときの相続には注意しましょう。
まとめ
相続税路線価の使い方や計算方法を紹介してきましたが、土地の形や住環境によって土地評価が下がる場合があります。土地の詳しい評価を知りたいなら、税理士などの専門家に委ねた方がよいです。みんなの相続相談・大阪では相続相談を無料で受け付けていますので、お気軽にご利用ください。