農地等の相続税・贈与税の納税猶予の特例について、2018年度(平成30年度)税制改正では、主に「生産緑地」に関連した改正が行われています。生産緑地は、1992年の全国一斉の指定から30年後である2022年に解除する手続きが可能になるといういわゆる2022年問題を抱えており、今回は2022年問題への対応の側面があります。今回は、農地等の相続税・贈与税の納税猶予の特例の改正について解説します。
1.特定農地の貸付けの特例が創設されます
生産緑地について相続税の納税猶予の適用を受けている人が、その農地について、①認定都市農地貸付け(農業者向けの貸付け)または②農園用地貸付け(市民農園向けの貸付け)を行った場合でも、一定の要件を満たせば、引き続き納税猶予の適用を受けることができるようになりました。
この特例の適用を受けるためには、認定都市農地貸付けまたは農園用地貸付けを行った日から2か月以内に「相続税の納税猶予の認定都市農地貸付け等に関する届出書」とその添付書類を税務署に提出しなければなりません。
この改正は、2018年9月1日以後の相続等から適用となります。それ以前に相続税の納税猶予の適用を受けている人についても、選択により、この改正を適用することができますが、その場合には、「3.納税猶予期限及び免除事由の見直し」も適用されることとなります。
2.適用対象地域等が見直しされます
農地等の相続税・贈与税の納税猶予の特例の対象に、次の農地が追加されました。
①特定生産緑地である農地等
②田園住居地域内にある農地 |
特定生産緑地とは、生産緑地の所有者等の意向を基にして、市が指定するもので、指定を受けると買取り申出ができる時期が10年間延長され、固定資産税の軽減等が図られます。
この特定生産緑地に指定されなかったもの、指定の期限の延長がされなかったもの、指定の解除がされたものについては、今回の改正により、農地等の相続税・贈与税の納税猶予の特例の対象から外れることとなりました。
この改正は、2018年4月1日以後の相続等から適用となります。
3.納税猶予期限及び免除事由が見直しされます
農地等の相続税・贈与税の納税猶予の特例では、一定の場合には、猶予されていた税金が免除されることとなります。この要件(営農継続要件)について見直しが行われました。
三大都市圏の特定市以外の生産緑地について、従来は20年間農業を継続していれば免除されましたが、改正により終身営農を継続することが免除の要件とされました。
この改正は、2018年9月1日以後の相続等から適用となります。
4.農地法改正により農地の定義が見直しされます
水耕栽培を行う農業用ハウスにするなど農作物栽培高度化施設の底面とするために農地の全面をコンクリートで覆った場合についても農地法が適用される場合には、引き続き「農地」して取り扱われます。なお、農業委員会に届出をしていない場合は、その土地は、農地法上の農地として取り扱われないため、農地等の相続税・贈与税の納税猶予の特例の適用対象の農地とはなりません。
この改正は、2018年11月16日から適用されます。
まとめ
農地等の相続税・贈与税の納税猶予の特例の改正について解説しました。農地等の相続税・贈与税の納税猶予の特例は適用要件が複雑です。今後適用を考えられている方でよくわからないときはみんなの相続相談・大阪までお気軽にご相談ください。