2019年税制改正により、教育資金の一括贈与の贈与税の特例について要件の見直しがされたうえで、適用期限が2年間延長されました。今回は、制度の概要と2019年税制改正のポイントについて税理士が解説します。
目次
教育資金の一括贈与の贈与税の特例の概要
特例の概要
教育資金の一括贈与の贈与税の特例とは、受贈者の直系尊属(祖父母など)が30歳未満の個人(受贈者)に対して、教育資金の目的で贈与をした場合、最大1,500万円(学校等以外に支払うものは上限500万円)まで贈与税がかからない、という制度のことをいいます。
ただし、単純に金銭を贈与しただけではこの制度は適用できません。銀行、信託銀行、証券会社などの金融機関に専用の口座を作り、贈与した資金はそこに信託や預入をするなどをしなければなりません。また、教育資金として引出しをする場合は、証明書類等を金融機関に提出するなどの手続が必要となります。
従来は、2019年3月31日までが期限でしたが、2019年税制改正により、要件が見直しされた上で、適用期限が2021年3月31日まで2年間延長されました。
教育資金とは?
教育資金には、学校等に対して支払うものと学校等以外の者に対して支払うものがあります。
<学校等に支払うもの>
入学金、授業料、入園料、保育料、施設整備費、入学試験の検定料、学用品の購入費、修学旅行費、学校給食費など |
<学校等以外に支払うもの>
学習塾・そろばんなどの塾代、スポーツ(水泳教室、野球教室など)や文化芸術(ピアノ、絵画など)に関する活動の指導料・受講料・施設利用料、学用品の購入費等で学校等が必要と認めたもの、通学定期代、留学のための渡航費などの交通費 |
特例の適用を受けるためには?
この特例の適用を受けるためには、受贈者が「教育資金非課税申告書」を利用する金融機関を経由して、所轄の税務署長に提出します。
贈与したあとはどうなる?
受贈者が30歳に達する(学校等に在学している場合などを除く)など一定の終了事由に該当した場合は、教育資金口座に係る契約が終了となります。その時点で残高があるときは、終了した年に贈与があったものとみなされ、贈与税の課税価格に算入されることとなります。この結果、贈与税の基礎控除額を超えることとなるときは、贈与税の申告を行わなければなりません。
2019年税制改正で教育資金の一括贈与の贈与税の特例はどう変わる?
2019年税制改正で主に次のような改正が行われました。
(1)受贈者の所得要件の見直し
2019年4月1日以後は、贈与があった年の前年の受贈者(子や孫など)の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、制度の適用ができないこととなりました。
教育資金の受贈者(子や孫など)の所得が1,000万円を超えるというのはレアケースでしょうが、その場合はこの特例の適用が制限されることとなりました。
(2)23歳以上の者に対する教育資金の範囲の見直し
23歳以上の者の教育資金の範囲については、①学校等に支払われる費用 ②学校等に関連する費用(留学渡航費等)③学校等以外の者に支払われる費用で、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するために支払われるものに限定されることとなりました。
2019年7月1日以後に支払われる教育資金について適用されます。
(3)残高に対する贈与税の課税の見直し
2019年7月1日以後に30歳に到達する受贈者については、30歳到達時に、①学校等に在学し又は②教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合は、その時点で残高があっても、贈与税は課税されないこととなりました。その後、①又は②に該当する期間がなかった年の年末に、その時点の残高に対して贈与税が課税されることとなります。ただし、それ以前に40歳に達した場合には、その時点の残高に対して贈与税が課税されます。
(4)贈与者死亡時の残高に対する課税の見直し
2019年4月1日以後は、贈与者の相続開始前3年以内に行われた贈与について、相続開始時におけるその残高を相続財産に加算して、相続税が課税されることとなります。
ただし、贈与者の相続開始日において受贈者が次のいずれかに該当する場合は除かれます。
①23歳未満である場合
②学校等に在学している場合
③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
なお、経過措置として、2019年4月1日前に信託された部分の残高については相続財産には含まれません。
まとめ
教育資金の一括贈与の贈与税の特例の概要と2019年税制改正による改正点について解説しました。適用期限が2年間延長されましたので、まだ利用されていない方は相続対策として利用を検討されてみてはどうでしょうか?よくわからないときはみんなの相続相談・大阪までお気軽にご相談ください。