相続した際に支払う相続税は、金額が大きいだけに負担も大きくなるものですが、実際には相続税がかかる人の割合は6%程度といわれており、ほとんどの人が払わなくていいこととなっています。とはいっても、平成27年1月1日から基礎控除額が減額されたことによって、相続税がかかる人の割合も増えています。自分は、相続税がかかるのか?かかったとしたら、いくら払わなくてはいけないのか?わからないからこそ不安が大きくなっていくと思います。また、控除や特例を適用することで、相続税を払わなくてもいい場合があります。ここでは、そんな相続税の要、相続税の控除(基礎控除)や特例について税理士が解説します。
目次
相続税の基礎控除とはなにか?
基礎控除とは、相続税がかかるボーダーライン
相続税の基礎控除とは、一定の金額までは相続税を支払わなくてもいいというボーダーラインです。相続財産がそれほど多くないときにまで税金を課してしまうのは酷ですから、一定の金額までは、税金を支払わなくて済むようになっています。
税制改正により、平成27年1月1日からこの基礎控除の金額が減額されました。そのため、今まであれば相続税がかからなかった人も課税対象になる可能性があります。相続税においては、この基礎控除の金額を超えているか否かが重要ですので、まずチェックしてみてください。
基礎控除の計算について
では、相続税の基礎控除はどうやって計算するのでしょうか。
具体的には、以下のようになります。
平成26年12月31日まで(改正前)→5000万円+(1000万✕法定相続人の数)
平成27年1月1日から(改正後)→3000万円+(600✕法定相続人の数)
実際の事例にあてはめてみると、
平成27年1月1日以降に亡くなられた被相続人の相続人が、母と子だけとすると
3000万円+(600万円✕2人)=4200万円が相続税の基礎控除額となります。
この金額を超えなければ、相続税は非課税となります。また、相続税の申告も必要ありません。
法定相続人のカウントの仕方に注意
相続税の基礎控除を計算する上では、法定相続人の数=実際に相続する人数とは限りません。
なぜかというと、相続の基礎控除の計算をする上で、以下のような制約があるからです。
・養子は、実子がいない場合で二人まで。実子がいる場合は一人までしかカウントできない。
ex.
養子五人の場合……3000万円+(600✕2)=4200万円
実子と一人と養子三人が相続人の場合……3000万円+(600✕2)=4200万円
・相続放棄があった場合は、相続放棄がなかったものとして計算する。
ex.
被相続人の子が放棄して、兄弟二人が相続する場合……3000万円+(600✕1)=3600万円
これらの制約は、不当に相続人を増やして、相続税の支払を回避させないための措置です。
養子を増やしたり、相続放棄して人数が多い兄弟に相続させることがまかり通ると、その分の基礎控除額が拡大するので、相続税を免れることにつながるからです。
上記のようなことがなければ、法定相続人の数で問題ありませんが、養子・相続放棄がある場合は注意が必要です。
その他の控除・特例を活用しよう
基本的には、相続税の基礎控除額を超えれば、相続税の納税が必要になります。
しかし、相続税には様々な控除や特例があるので、あてはまれば支払が不要になることもあります。
具体的には、以下のようなものがあります。
配偶者控除
配偶者が相続する場合は、取得額が法定相続分を超えない場合や、1億6000万円までは課税されません(相続税の配偶者控除)。婚姻関係にあることが必要なので、内縁関係の場合は使えません。
被相続人の財産は、内助の功があったことで築くことができた等の考えから、配偶者に対する相続税は軽減されています。
小規模宅地等の特例
一定の要件は必要ですが、居住用宅地は330㎡・事業用宅地は400㎡まで、評価額が最大8割減額できます(小規模宅地等の特例)。
相続税の納税のために住んでいる家を売らなければならない、事業を廃止しなければならない……などということがないようにするための制度です。
生命保険金・退職手当金の非課税枠
生命保険金・退職手当金の双方に、一人あたり500万円の非課税枠が適用できます。
つまり、生命保険金と死亡退職金を受取った場合で、相続人が2人であれば、2,000万円まで非課税(生命保険金1,000万円、退職手当金1,000万円)になります。
なお、生命保険金は契約者、被保険者、保険金受取人により課税関係が変わってきますので注意してください。
未成年者控除
未成年者が相続したときは、20歳になるまで、年10万の控除が受けられます(未成年者控除)。
未成年者は、教育費などがかかるので、そこに課税をしてしまうのは酷です。
そこで、未成年者には相続税の控除を認めています。
障害者控除・特別障害者控除
障害者控除は、85歳まで年10万円の控除が受けられます(障害者控除)。
特別障害者控除は、85歳まで年20万円の控除が受けられます。
未成年者同様に、生活保障のために控除を認めています。
相次相続控除
10年以内に2回相続が発生した場合に、前回の相続税額のうちの一定額を控除することができます(相次相続控除)。短期間で相続が発生すると、相続人の税負担が大きくなることから控除が認められています。
上記のように、相続税には様々な控除や特例がありますが、
気をつけなければならないのは、相続税の申告です。
税金がかからなくなったから、申告をしなくていいと考える方もおられるのですが、配偶者控除や小規模宅地等の特例では、相続税の申告をすることにより適用ができるものとなっていますので、税金がかからなくても申告が必要です。くれぐれも忘れないようにしてください。
まとめ
相続税の基礎控除や特例などをみてきました。相続税といっても、基礎控除や特例などを差し引くと大半の方が払わなくてよいことになるでしょう。相続税を払うのは、全体の6%ほどと言われています。大切なのは、控除や特例をしっかり適用できるかどうかです。
制度を知らないばかりに、相続税を払うことになってしまった……ということがないように、様々な制度のことを知っておきましょう。わからないことがあれば、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。