相続するのは現金や株券、負債だけではありません。両親が作ったお墓や先祖代々のお墓も相続対象です。
お墓の相続でつまずかないために、手続きのポイントや注意点をご紹介します。
お墓の相続の手続き
お墓は名義変更の手続きをすることで、正式に相続したことになります。埋葬(埋蔵)法要の予約をする際に管理事務所へ申請します。
・名義変更申請書
・戸籍謄本
・墓地使用許可証
この3点を用意し、手続きを進めましょう。また、印鑑登録証が必要になるなど、霊園や寺院によって必要な書類が多少異なります。お墓の相続が決まったら、手続きを行う前にどの書類を提出するのか確認するのを忘れずに。
名義変更申請書も霊園や寺院ごとの様式があります。必要な書類とともに管理事務所へ問い合わせておくと、その後の手続きがスムーズです。
戸籍謄本は新名義人の戸籍謄本だけではなく、旧名義人の死亡が記載された戸籍謄本も必要です。墓地の使用権を取得した際に発行された墓地使用許可証も、旧名義人のものから新名義人へ書き換えてもらうために用意しなくてはなりません。
お墓の名義変更は基本的に被相続人(墓地使用許可証の元の持ち主)が死亡した後に行われますが、例外として管理が困難になった場合など、生前でも許可されることがあります。
お墓の相続にかかる費用
お墓の名義変更には、それなりの費用がかかります。たとえば公営墓地の場合、数百円~3,000円ほどの相場となり、民営墓地では5,000円~10,000円の料金を支払うことになります。
これはあくまで相場であり、諸費用が決まっている霊園や寺院もあれば、葬式のお布施に含めて名義変更してくれるところもあるようです。費用が明確でない場合は、二重に費用がかかるのを防ぐために一度問い合わせてみましょう。
ちなみに、もし使用許可書を再発行する場合は1万円以上かかるケースが多いです。この他、場合によっては名義変更費用とは別にお布施を包むこともあります。もし10万円など高額な費用となった場合は、このお布施が含まれているかもしれません。
また、相続というと気になるのが相続税の存在です。なんとなく不動産と似たような扱いを想像している方も多いのではないでしょうか。
しかし、お墓(墓地や墓石)は相続税の非課税財産(相続税がかからない財産)となっていますので、相続税はかかりません。そのため、生前に墓地や墓石を購入しておけば、預貯金などの相続財産が減って、相続対策ともなります。
ただし、お墓を購入したものの未払となっているときの未払金や借入をしてお墓を購入したときの借入金は、相続税の計算に当たって、債務として差し引くことはできません。相続税の非課税財産に関する債務となるためです。
お墓は不動産のように所有権を得ているものではありません。あくまで土地の使用権を得ているものなので、個人の所有物扱いされるのは墓石など土地以外の部分です。よって改葬するときは、更地にして土地を返還することになります。(返還時に購入費用の一部が返金される場合もありますが、多くの場合は返金なしです)
そもそもお墓自体、実は一般的な相続財産が切り離されています。お墓は祭祀財産といい、墓碑(墓石)もその対象に含まれます。
お墓は相続と言いつつ、どちらかというと継承に近いものです。先祖を祀るために特定のひとりが継承することから、相続税は発生せず、仮に遺産の相続放棄をしている場合もお墓は相続可能です。
ただし、相続税がかからなくともお墓の管理費用や法要の費用が毎年かかるため、名義変更以外の出費がまったくないわけではありません。
なお、お墓の他にも、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物(骨董的価値があるものなどを除く)は同様に相続税の非課税財産とされています。
(関連記事)生前にお墓を購入すると相続税の節税になる?お墓をしたときの借入金は債務控除できる?
お墓は誰が継ぐの?
お墓は基本的にひとりが継承することになります。継承には優先順位があり、遺言や被相続人が生前に指定した人物がまずあげられます。前項で解説したとおり、その他の遺産相続とは切り離して考えられるため、口頭での指定も有効です。
次に優先されるのは、その土地の慣習です。相続人による指定がない場合はその土地に慣わしに従い継承する人物が選ばれますが、曖昧なケースが多く、最終的に親族間の話し合いで決められます。
指定された継承者がいない上、慣習も曖昧。親族間で話し合っても継承者が決まらない。そのようなときは、家庭裁判所の調停や審判が入ることもあります。
相続が放棄された(継承者が決まらない)お墓は法律上無縁墓となり、一定期間が過ぎると撤去されてしまいます。
友人や知り合いのお墓が撤去される事態になるのは、何とも歯がゆいもの。できれば自分が継承してあげたいのに、と考える方は、思い切って継承者に名乗り出てみてはいかがでしょうか。
民法897条の「祭祀に関する権利の承継」には、被相続人の指定により祖先の祭祀を主宰すべき者があるとき、その指定された人物が継承するとしか書かれていません。そこに血縁の有無は規定されておらず、言い換えるなら血縁者以外もお墓を継承することができるのです。
もちろん、所定の手続きと家族による同意書が必要ですが、法律的には何の問題もありません。とはいえ、実際には血縁者以外の継承を墓所管理側がなるべく避けるよう規定していることもあり、事前の確認を怠らないようにしましょう。
まとめ
お墓は相続税がかからない財産とされており、相続したからといって相続税を納めなくてはならないということはありません。そのため、生前にお墓を購入しておくことは相続対策ともなります。ただし、使用許可証の名義変更など、手続きのための費用が発生します。
継承者には優先順位がありますが、死亡した本人が希望していた場合など血縁者以外が継承することもできます。ただし、家族の同意や墓所管理側の承諾も必要です。