誰も暮らす予定のない住宅を相続した場合、相続した家をとりあえず空き家のままにしておこうと思っている人もいるのではないでしょうか。実は、相続した家を空き家にしておくことにはリスクがあるため、注意が必要です。
今回は、相続した空き家を放置することで起こりうるリスクと、リスクを回避する方法について解説します。
相続した空き家を放置することで起こりうるリスクとは
相続した空き家を放置すると、行政から指導が入ったり強制的に解体されてしまったりする可能性があります。場合によっては、これまで支払っていた固定資産税の金額が6倍にまで跳ね上がる恐れもあるため、注意が必要です。
昨今、空き家の増加が問題視されていることをご存じでしょうか。空き家が増えるのは、家を取り壊すことで「住宅用地の特例」を受けられなくなることが原因だといわれています。
当然のことながら、土地には固定資産税が課税されますよね。
しかし、その土地が住宅用地であれば、固定資産税を最大で6分の1まで軽減してもらえます。これが「住宅用地の特例」です。この特例措置を適用してもらうには、その土地に居住用の建物が建っていなければいけません。
反対にいえば、たとえ実際には誰も住んでいないとしても、居住用の建物さえ建っていれば特例措置を適用してもらえます。
つまり、空き家を放置する人の中には、建物を取り壊すことで固定資産税が高くなってしまうことを避けるために、あえて空き家を放置している人もいるということです。
家を解体するとなれば、そうでなくても解体費用がかかります。わざわざ費用をかけてまで解体したにもかかわらず固定資産税まで高くなるなら、解体などせずにそのまま放置した方がマシだと考えるのは当然の心理といえるでしょう。
ただ、空き家を放置することで周囲の住民や、その空き家の周辺を行き来する人たちに危険を及ぼす可能性があるのも事実です。
家が老朽化すれば倒壊する恐れもありますし、動物や害虫が巣を作ることで近隣住民に迷惑をかけるケースも少なくありません。動物や害虫だけでなく、いわゆる不良と呼ばれる人たちやホームレスなどのたまり場になったり、放火をされたりする危険もあります。
そこで制定されたのが、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家対策特別措置法)です。この法律により、行政から「空き家等」および「特定空き家等」に該当するとみなされた不動産については、修繕や撤去の指導・勧告・命令を受ける可能性が生まれました。
さらに、行政から勧告を受けた場合は、先ほど紹介した「住宅用地の特例」からも除外されてしまいます。
つまり、「あなたの土地に建っている空き家を何とかしなさい」と行政から言われたにもかかわらず放置し続けると、強制的に建物を解体される(行政代執行)可能性や、固定資産税が現状の6倍にまで跳ね上がる可能性があるということです。
ちなみに、強制的に建物を解体された場合は解体費用も行政から請求されます。
では、行政から空き家に対する指導を受けないためには、一体どうすればよいのでしょうか。
「特定空き家」に指定されないようしっかり管理する
行政から指導を受けないためには、今ある住宅が「特定空き家等」に指定されないようにしっかりと管理をすることが大切です。
行政が指導の対象とする「特定空き家等」を判断するに当たっては、以下の状態を基準にしています。
- そのまま放置すれば倒壊等の著しく危険となる恐れがある状態
- そのまま放置すれば衛生上、著しく有害となる恐れがある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
こういった状態にならないようにしっかり管理さえしていれば、行政からの指導が入る可能性は低いでしょう。
ただ、空き家を管理するためには維持費と手間がかかります。そう考えれば、ただ空き家として放置するよりも、売却するか有効な活用方法を探した方がよいのではないでしょうか。
資産価値が下がれば売却できる可能性も少しずつ減っていきますので、相続した住宅は空き家のまま放置せず、早い段階で対処方法を決めるのがオススメです。
まとめ
たとえ行政からの指導が入らなかったとしても、空き家を放置すると確実に建物の状態は悪くなります。倒壊や火災、治安悪化などの危険もありますし、いずれは近隣住民に迷惑をかけることにもなりかねません。さらに、空き家の倒壊や火災などによって近隣住民に被害が出た場合は、その不動産を所有しているあなたに賠償責任があるのです。相続した空き家は放置せず、早い段階で対処方法を考えましょう。