相続税の申告にあたっては、相続開始前3年以内に行われた贈与による財産や相続時精算課税制度の適用を受ける贈与財産を相続財産に含めて相続税の計算をする必要があります。そのため過去に行われた贈与の情報が必要となりますが、贈与税の申告書が残っておらず、その正確な状況がわからないということも考えられます。そのような場合には、贈与税の申告内容の開示請求をすることができます。今回はこの開示請求について税理士が解説します。
贈与税の申告内容の開示請求手続とは?
開示請求の概要、開示請求をすることができる人は?
開示請求は相続や遺贈(相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与を含む。)で財産を取得した人が、被相続人に係る相続税の申告書の提出や更正の請求に必要となるときにすることができます。
また、この他にも相続による国税の納付義務を承継した人や、相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継した人についても、開示請求をすることができます。
開示される情報は、他の相続人等がその被相続人から相続開始前3年以内に取得した財産又は他の相続人等がその被相続人から取得した相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格の合計額です。
開示請求の方法は?
開示請求をするときは、被相続人の死亡時の住所地等を所轄する税務署に対して、「「相続税法第49条第1項の規定に基づく開示請求書」を提出します。提出する際には次の書類の添付が必要です。
(1) 全部分割の場合:遺産分割協議書の写し
(2) 遺言書がある場合:開示請求者及び開示対象者に関する遺言書の写し
(3) 上記以外の場合:開示請求者及び開示対象者に係る戸籍の謄(抄)本
この開示請求は、被相続人が死亡した年の3月16日以後に行うことができます。
・被相続人が2月1日に死亡した場合⇒3月16日以後に開示請求することができます。
・被相続人が4月1日に死亡した場合⇒4月1日以後に開示請求することができます。
なお、開示請求は代理人がすることもできますが、その場合は「委任状」が必要となります。
開示書はいつ受領できる?受領の方法は?
税務署長は開示請求を受けてから2か月以内に開示をしなければならないことになっています。開示請求をしてすぐに開示する訳ではありませんので、相続税の申告期限に間に合うように早めに開示請求をするようにしましょう。
開示書の受領方法には、①税務署での直接受領と②郵送での送付受領があり、開示請求書の中で選択します。直接受領する場合は、受取の際に請求者または代理人であることを確認するための書類(運転免許証など)が必要です。送付受領する場合は、開示請求する際に、開示請求者の住民票の写しと返信用の封筒に切手を貼ったものを添付する必要があります。
まとめ
贈与税の申告内容の開示請求手続について解説しました。相続税の申告にあたって、過去に行われた贈与の情報が正確でないと、後に修正申告などが必要になったりする可能性があります。そのため、贈与税の申告書の控が残っていないときには、この開示請求手続を利用して、確認をした上で、相続税の申告を行うとよいでしょう。