遺留分の減殺請求がされているとき、相続税はどのタイミングで、どのような内容で申告すればよいのでしょうか?税理士がポイントを解説します。
遺留分の減殺請求とは?
遺言は、遺言者の死亡の時から効力が生じます(民法第985条第1項)。
そのため、被相続人が有効な遺言書を作成しているときは、被相続人(遺贈者)の死亡とともに、遺言で指定した相手方(受贈者)に、その財産に対する権利等が移ることとなります。
しかし、一定の法定相続人に対しては、遺留分が認められており、遺留分を侵害するような遺言書の内容となっているときは、受贈者に対して遺留分の減殺請求をすることができます。いくら遺言書が有効とはいっても、被相続人に関係の近い一定の法定相続人については、一定の財産の相続が法律で保障されているのです。
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遺留分の減殺請求がされているときの相続税の申告
例えば、被相続人(お亡くなりになった人)が長男に全ての財産を相続させる遺言書を作成していた場合、その遺言書に従って遺産分割が行われることとなります。しかし、配偶者などの遺留分権利者がいる場合、遺留分権利者には遺留分があります。
配偶者などの遺留分権利者から相続税の申告期限までに遺留分の減殺請求を受けたときには、最終的に相続する財産の額が確定していない、というようなことになります。この場合の相続税の申告はどのようにして行えばよいのでしょうか?
このように遺留分の減殺請求がされている場合であっても、法定申告期限までに遺留分による減殺の請求に基づいた返還または弁済すべき財産の額が確定していないときは、遺言に基づいて期限内に相続税の申告書を提出しなければなりません。
そのときの相続税の申告書においては、減殺請求されている遺留分に相当する金額を控除することはできません。つまり、相続税の法定相続期限までに、遺留分による減殺の請求に基づいて返還等すべき額が確定していないときは、遺言書による遺産分割に基づいて相続税の申告を行います。
相続税の申告後に遺留分が確定したとき
遺言書による遺産分割に基づいて相続税の申告を行った後に、遺留分による減殺の請求に基づいて返還または弁済すべき額が確定したときは、確定してから4月以内に更正の請求を行います。これにより払いすぎた相続税が還付されることとなります。
一方で、遺留分の減殺請求により財産を得た方は、これにより新たに申告する必要が出た場合には、期限後申告書を提出することとなります。
まとめ
遺留分の減殺請求がされているときの相続税の申告について解説しました。遺産分割協議が確定していない場合とは異なり、遺言に基づいて相続税の申告を行う必要がありますので、間違えないように注意しましょう。